カササギと「ちは」札(1)

7月7日は七夕の日。
今年の織姫と彦星は、無事にカササギの橋を渡ることができるのだろうか。


 
鵲(カササギ)の橋:七夕の夜、牽牛(けんぎゅう)・織女の二星が会うとき、カササギが翼を並べて天の川に渡すという想像上の橋。(コトバンクより)



織姫たちは、ニルスの不思議な旅のようにカササギの羽に乗って飛んでいくわけではない。
何羽にも重なって出来たカササギの羽の上を渡っていくのである。


kasasagi.jpg


イメージとしてはこんな感じか…なんか絵が変だな。

千早と新が離れ離れになってしまったシチュエーションは、七夕の話にも見えなくもない。
真ん中に流れる川は、天の川ではなく竜田川。
千早が織姫、新が彦星だろうけど、最近のメルヘンな新くんを見ていると、もしかして新が織姫なのか?と思う時もある(笑)

そしてカササギについて。
カササギの橋は一羽ではない。
多くのカササギの連なりである。
「ちはやふる」においてのカササギも答えが一つではないのだろう。
一体何がカササギなのだろうか考えてみた。


隠れカササギ



作中はっきりと描かれているカササギは次の通り。

8巻45首「携帯電話ってすごいねえ~かささぎみたいだね~」
携帯電話
10巻56首「携帯電話じゃない。おれらにとってのかささぎは」
→恐らくカルタ

しかしもう一つ、隠れカササギが登場しているのをご存じだろうか。
21巻112首ラストに登場する、夏の大三角形である。


 seiza2.jpg  seiza.jpg


夏の大三角形のベガとアルタイルは、七夕の伝説における「織姫」と「彦星」、デネブは「カササギ」である。
修学旅行後の10月24日夜8時頃、東京では南西の方に見える。

注目すべきは、ここでの新と千早は、ケータイカササギだけでは意思疎通が全くできていないことだ。
会話の仲介役になったのは、太一だ。

思えば太一は今までも何かにつけ千早と新の仲介役になっている。
千早と新が仲良くなったのも元々は太一のイジメが原因だし、カルタ会を紹介したのも太一。
千早が新に会いに福井へ行く手伝いをし、メールの中継ぎもしている。
新が吉野会で嫉妬して恋を自覚したのは太一の頑張りがあったからだ。

ただの恋敵というだけでなく、千早と新の仲を取り持つお節介なことまでしてしまう。
なんとも不憫なキャラクターだ。
実は太一はカササギではなかろうか、と思う時がある。
織姫に恋してしまった、悲しいカササギだ。


「ちは」札考察



織姫千早の恋心として思い浮かぶのは「ちは」札だろう。
2巻の最後で「ちはやふるは真っ赤な恋の歌」と書いてある。
「ちは」札もまた、カササギの橋の一つだと思う。
しかしいつの間にかそれは千早の所に出なくなってしまった。

千早の「ちは」札はどこへ行ってしまったのか。
この「ちは」札についても考察してみようと思う。

まずは太一。
「ちは」札が読まれた時の試合の経緯について調べてみると、次のようになる。


 対戦相手「ちは」の最初の場所
 1巻1首 新・千早 自陣
 4巻18首 ヒョロ 敵陣
 11巻60首 ヒョロ 不明
 14巻74首 七瀬 不明
 17巻89首 理音 敵陣
 21巻109首 ポカ作 自陣
 25巻133首 新(ホテル内でのイメージ) 自陣
 26巻134首 新 自陣
 35巻(予定)184首 須藤 自陣


見ての通り21巻から「ちは」札がすべて自陣だ。

そして千早。千早は19巻100首の猪熊戦以来、「ちは」札が出ていない。
ここで先ほどの太一の欄に、先ほど紹介した隠れカササギと、最後の千早の「ちは」札の時期を合わせてみる。


 対戦相手「ちは」の最初の場所
 1巻1首 新・千早 自陣
 4巻18首 ヒョロ 敵陣
 11巻60首 ヒョロ 不明
 14巻74首 七瀬 不明
 17巻89首 理音敵陣
19巻100首千早最後の「ちは」札
 21巻109首 ポカ作自陣
21巻112首隠れカササギ
 25巻133首 新(ホテル内でのイメージ) 自陣
 26巻134首 新 自陣
 35巻(予定)184首 須藤 自陣


最後の「ちは」札、「ちは」札が自陣になった時期、そして隠れカササギの登場。
全てが20巻前後に重なっている。
太一が千早の「ちは」札を持っているようにも見える

なぜ千早の「ちは」札を太一が持っているのだろうか。
20巻は太一と千早が吉野会で戦った巻だ。
太一が「千早と戦うのが新ではなく自分であってほしい」と強く願ったからに他ならない。
この試合で、「ちは」札を自分のものにできるチャンスが巡ってきたということだ。

では「ちは」札は、なぜ未だに千早に出ないのか。
「ちは」札は千早の恋心なので、もしかすると太一の失恋が関係するのかと思ったのだが、


 対戦相手「ちは」の最初の場所
19巻100首千早最後の「ちは」札
 21巻109首 ポカ作 自陣
21巻112首隠れカササギ
 25巻133首 新(ホテル内でのイメージ)自陣
 26巻134首 新 自陣
26巻138首太一の失恋
 35巻(予定)184首 須藤 自陣


19巻から26巻まで開いている。
失恋と「ちは」札消失との時期は合わない。
どうやら太一の失恋とは直接的には関係なさそうだ。

20巻は、太一が自分は何になりたいのか、そしてカルタの道を進むかどうかを悩み始めた時でもある。
(「183首感想---太一の夢」参照)

「ちは」札はカルタの世界のカササギだ。
しかし「ちは」札を持つ太一は、カルタを続けるべきかずっと迷っている。
太一がカルタの世界から離れれば、「ちは」札は千早の心に永遠に戻らない。

つまり千早に「ちは」札が戻るには、太一がカルタの世界に留まること、さらに千早に「ちは」札を届けることが必要なのである


31巻考察



31巻をもう一度振り返ってみたい。

団体戦三位決定戦のあの時、新を前にしても千早は空虚な心であった。
それは千早の心にカササギの橋となる「ちは」札がなかったためだ。
そこで太一が登場し、空札の「ちは」が読まれる。
太一は一瞬だけ読手となり、新と千早の橋渡しをした。
チビ太一の持っている札は裏で見えないが、まさに「ちは」札ではないだろうか。

太一がカルタの世界にいれば「ちは」札が戻り、新とまたカルタができる。
逆に太一がカルタの世界から消えれば、二人のカルタは永遠に繋がらない。
新と千早が結ばれるには、太一がカルタの世界に留まる決意をしなくてはいけない。
「ちは」札と太一の覚悟が、カササギの橋渡しになるということだ。

自分の運命に苦しむ太一が、実は自分が新と千早の運命を握っているという逆転の発想だ。


太一はカルタを続けるか



太一はカルタを続けるだろうか。

福ら雀さんのブログで、須藤さんの戦いで太一が一生カルタを続ける決心をするのでは、という考察をされている。
こちらのコメント欄で素晴らしい考察をされているので是非ご覧いただきたい。

須藤さんとの一戦で、太一が「カルタを一生続ける」と腹を括るかもしれない。
「ちは」札を諦めるという決心も垣間見れた(これについては「カササギと『ちは札』(2)」で検証する)。
そうすればおのずと千早に「ちは」札が戻ってくる。
しかも新の予選結果の一報が届くだろう。新が勝ち上がるのは間違いない。
「新に追いつきたい、同じ道に行きたい」という強烈な思いが千早の中に生まれると思う。

太一の覚悟と千早の想いにより、千早の「ちは」札は決勝で蘇る可能性がある。
千早の力が爆発する予感しかない。
決勝の相手は田丸さんかな。
ああ田丸さん、合掌…

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