初期設定考察(1)

ちはやふるの魅力とは何だろう。

この漫画は少女漫画であり、カルタ漫画あるいは少年漫画、スポーツ漫画、青春、恋愛、そしてミステリでもある。
そのどれかに焦点を当てるかで全く違う印象を受ける。
人によって感想が全く異なるのは当然のことだし、だからこそこの作品の魅力は無限に広がっているのだろう。

話のテーマは多岐に渡り、主人公を支える脇役の掘り下げも奥深い。
読み返すたびに新たな発見と感動を味わうことができる素晴らしい作品だと思う。

AをAとして書き続ける漫画家は巷に溢れているが、AをBに変化できる漫画家は少ない。
読者を楽しませ納得させるためには、緻密なプロットと細やかな伏線が必要となるからだ。
ちはやふるの作者の末次先生は、そんな稀有な才能を持った漫画家の一人だと思う。
わたしがこの作品に魅了されてやまない理由の一つでもある。




さて今回は、以前読者全プレで手にしたネームノートから。


syokisettei.jpg


このネームノートには「ちはやふる」176首の貴重なネームの他、「ちはやふる」がまだ世に出る前の初期設定が載っている。
作者の妥協を許さない拘りが、このキャラ設定からも随所に読み取ることが出来る。
深読み大好き人間にはたまらない冊子だ。
この初期設定から見えてくることを簡単に纏めておこうと思う。


千早



まずは千早。
気になった部分だけを抜粋比較してみた。


 初期設定 本 編 
年齢  11 12
好きなこと
運動
アウトドアゲーム
パズル作り
理科
社会
体育
音楽
嫌いなこと 
読書
勉強 
 -
 怒り顔chihaya1.jpgchihaya2.jpg 


1.年齢の違い


最初に驚いたのが年齢。11歳となっている。
新、太一も11歳、しかし一巻では12歳。
一歳年上の千歳も初期設定では12歳となっている。
当初千早たちは「小5設定」だったのかもしれない。
つまり新が東京に2年間いたということだ。

なぜ本編では小6に変更したのだろう。
恐らく高校生の話がメインであることから、小学時代を極力短くしたのだろうと思う。
また競技カルタというマイナーな題材を扱うので、打ち切り回避のため話のテンポを速めたのかもしれない。
あえて半年にしたことで、別れの切なさをより一層強調することもできた。

けれどもわたしは「チームちはやふる」の話がとても好きなので、三人でピクニックをしたり、お祭りに行ったり、家で一緒に遊んだり…そういった日常の生活がもっと見たかった気もする。
いつか「チームちはやふる」日常生活をスピンオフで描いてもらえればいいなあ…と密かに願っている。


2.勉強嫌い


勉強嫌いから、理科・社会・体育・音楽が好きに変更された。
これは高校で太一と同じ進学校に通うこと、また競技カルタは頭を使う競技であることから、勉強ができないのはさすがにマズいと変更されたのだろう。

しかし成績が芳しくなく受験が危うい今の状況を見るに、千早には可哀想だが初期設定はそのまま継承されてしまったようである。


3.怒り顔


この怒りよう(笑)千歳とセットにするとお揃いの怒り方。姉妹ゲンカだろうか。怖いなあ。


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性格の設定に大きな違いはなかったのだが、この表情だけには引っかかるものを感じた。
姉に対する感情を思いっきり爆発させている。
本編よりも初期設定の方が、千早の我の強い印象を受ける。

一巻の千早は、姉に怒る様子がない。
怒るよりも先に千歳に上手く言いくるめられてしまう、ちょっぴり呑気な印象を受ける。
美人な姉を素直に喜ぶ千早像を作るために、あえて千早の我をなくしたのかもしれない。