ちはやふる187首感想---微笑む幻影

BE・LOVE 2017年19号掲載


西日本予選決勝。
ポジティブモンスターの小石川の力に押され窮地に立った新の前に現れたのは、じいちゃんでも千早でもなく、なんと優しい微笑みを浮かべる太一の幻影だった。


太一の笑顔



この姿どこかで見たことがあると思ったら、26巻の高松宮戦「かるたしよっさ」のシーンで見せた、太一の笑顔である。
新と太一は高校になってからはほとんど会っていない。
2巻で新に会いに行ったとき、高校選手権、吉野会、東西戦、名人戦そして高松宮杯くらいある。
新が思い出す太一の笑顔はこれしかない。

難しいと思ってた 太一と戦うのは
心臓が ふわっと大きくなるような 嬉しい

高松宮杯での新は太一と戦えることが出来て、赤面しまくりの状態だった。
しかも大事な友達に「かるたしよっさ」なんて笑顔で言われて、これほど嬉しいことはなかった。

うれしかった 名前があるのがうれしかった
うれしいと思う自分が うれしかった

東日本予選の結果を見て、太一と戦いたいと純粋に喜ぶ新。
太一戦の時の気持ちと今回の気持ちは重なっている。


ライバル



新は太一の卑怯さを理解している。
自分にも「友達を見下していた」という負の気持ちがあったからこそ分かる気持ちだ。
新にとって太一はすでに単なる友達ではない。
一緒に頂点を目指して戦う仲間だ。(友と書いてライバルと読むという、アレである。)
自分が勝ちに行く理由がそこにはある。
今回の新の強さは、仲間に会いたいという思いだけではなく、仲間と「戦う」意義を見つけたというところにあるのではないだろうか。

男の友情ってやっぱりいいなあ~!
チビ新とチビ太一のシーンなんて最高に好きなシーンだ。何十回も読み直した。
今回の展開には本当に泣けた。マジ泣きした。先生素晴らしいシーンを本当にありがとう…!


「かるたしよっさ」



ところで「ちは」札、実は前回ではポカ作の陣にあった。
いつの間に新の陣に送られたのか?
今回の話で明確に描写されていないのではっきりとは分からないが、一つ考えられるとしたら太一の幻影のシーン。
この時にポカ作が「ちは」札を新に送った可能性は高い。

「ちは」札で思い出されるのが、高松宮杯での戦い。
高松宮杯では太一が新に「ちは」札を送る重要なシーンがある。
更に、視界が悪い試合というのは小学生時代の校内かるた大会を彷彿させる。
眼鏡をなくしてミスした試合は、戦う相手が太一だった。
そして試合の前には東日本予選の結果表を見て、太一を意識している。

曇った眼鏡、お手付き、送られた「ちは」札、太一の名前、うれしい気持ち…

それらが全て繋がり脳裏に蘇ったのが、太一戦で一番うれしかったイメージ、つまり、「かるたしよっさ」の太一の優しい微笑みだったのではないだろうか。
じいちゃんの「イメージ」の教えがここでも役に立ったということだ。
これであれば幻影がじいちゃんや千早ではなかった理由にも一応の説明がつく。
まあ憶測でしかないのだが、いずれにせよ、このイメージが前回のお手付きからの切り替えの重要なポイントになったのは間違いないだろう。


勝負札



新は「ちは」札を送って勝負に出た。
今回の戦いで一番大事だったのは、「ちは」札を攻めることもそうだが、それ以上に「ちは」札を送って勝負することに意味がある
これで新はまた一歩前へ進むことができたのだ。
結局「ちは」札は読まれなかったが、いずれ必ず取れるだろう。
ポカ作が負けたのは4回もお手付きしてしまったことではなく、新に「ちは」札を送ってしまったことに一番の原因があるのではないかと思う。
ポカ作は「ちは」札を送るべきではなかった。
新から「ちは」札を送り返された時点で、すでに勝負は決まってしまっていたのだ。

そして新くん、二年連続東西戦出場おめでとう!\(^o^)/
この力は本物だなあ。
そりゃあ原田先生も汗かいて驚くだろう。
男性は20の辺りで身体が仕上がるから、高校生でこの実力ってとんでもないなって思う。
キミほんとに歳いくつ…


ヒーロー



さて今回新にヒーロー認定された千早。
しかも「おれたちは」と新が言っていることから、恐らく太一にとっても千早はヒーローなのだろう。
わたしは以前の考察(カササギと「ちは」札(2)参照)で、太一が強くなるためには「ちは」札を捨てることと言った。
勝利を手にするためには失恋の痛手を克服することが絶対の必要条件だが、どうやらそれは「ちは」札を捨てることではないようである。

ヒーローとは常に自分の味方になって、一緒に戦ってくれるもの。

「ちは」札から逃げるのではなく「自分に力をくれる大切な仲間」と認識を変えることが必要なのかもしれない。
微妙な話になってくるので、この辺り作者はどう描いていくのか気になるところである。

そして当のヒーローである千早はというと、更なるピンチに陥っているようで非常に心もとない。
千早にとってのヒーローは誰なのか…
このピンチをどう乗り越えるのか、次回の展開に期待したいと思う。

とにかく、新は千早と太一二人を信じて一足早く歩みだした。
純粋なその思いに二人も応えてほしいと、切実に願っている。

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