ちはやふる中学生編1首感想---一人じゃない

BE・LOVE2017年21号掲載


今回から連載の漫画ちはやふる「中学生編」。

末次由紀先生は「中学時代を知りたい」というわたしの希望に、いくつもの隠れたエピソードを教えてくださり…(時海先生あとがき)

…「こんなエピソードを入れたかったけど、高校生編ではとても入れる隙間がないなあ」と思っていたアイディアをそのまま時海先生に預けました。(末次先生あとがき)

小説ちはやふる中学生編は末次先生が原案、またアイディアをたくさん提供されている。
千早の孤独、太一の母親との確執、勉強、部活、受験など、高校と基本的に三年間の流れが同じなので、漫画に似た既視感を感じる部分がたくさんある。
しかし漫画と同じ部分をテーマにしつつも高校の時とは全く違う行動を起こすことがあり、まだ世間というものをよく知らない中学生らしい千早たちの幼さも垣間見ることが出来る。
高校生と中学生、それぞれの千早たちの行動の違いについて比較してみるのも、この中学生編の楽しみ方の一つであると思う。

遠田先生のちはやふるの魅力は、とても元気いっぱいの千早が見れることかな。
末次先生へのリスペクトを感じてとても好感が持てた。
話の内容も自分なりのストーリーで描いてくれて、例えばC級大会は小説では太一からの話になっているのだけれども、それを千早視点のモノローグで描いてくれている。
「せをはやみ」のシーンは小説版にも末次先生の絵があるけれども、それとは構図を変えた遠田先生としての絵になっており、「自分は一人じゃない」という千早の喜びを画面いっぱいから感じることが出来た。

ただ試合後の千早の行動がちょっと気になったかな。太一の優勝を喜びつつ、千早だったら「次は絶対わたしが勝つ!」って言うんじゃないかな~と思った。

確かに小説版にも「自分のように大騒ぎしていた」とあるけど…このあたりは感性の違いかもしれないなあ。


これからも末次ちはやふる、時海ちはやふるとはまた違う、「遠田ちはやふる」をしっかりと描き続けてもらえればと思います。
では今回のお話について、小説版の話を補足しながら二つほど軽くおさらいしようと思う。


千早の孤独



千早が中学に入ってから半年間、彼女にはカルタ友達どころか普通の友達すらいなかった。
皆に無視され入るグループがない、酷いことは言われないものの、要するに仲間外れである。
教室に友達が出来なければ部活にそれを求めればいいのだが、カルタを優先していたので部活にも入らなかった。
両親も初夏のころから千歳の仕事に付きっきりになり、千早の世界はとうとう太一と原田先生だけとなってしまった。(原田先生にも「友達が必要だ」と心配されるほどだった。)

C級大会は秋分の日の大会。
この日まで千早は学校の友達がいない。
千早は新学期から半年近くずっと、小学生の時の新と同じようなぼっち状態になっていたのである。

中学生入りたてで環境も変わり思春期の多感な時期だというのに、全く友達と馴染めなかったというのは相当辛い思いをしただろうと思う。
千早の元来の明るさでそれを補っていたけれども。
この孤独感が、後の千早の人格に大きな影響を及ぼしている可能性はある。

高校で新が一人だと分かったとき、また太一が一人になろうとしたとき、真っ先に思い浮かんだのはこの時の自分の寂しかった気持ちではないだろうか。
「一人になってはいけない」という千早の異常なまでの執念。
この気持ちはこの時の経験で培われたのだろうと思っている。

遠田先生の描く千早は、そんな寂しさよりも明るさが前面に出されていた。
前向きに頑張る千早の姿は清々しい。
やっぱり千早は元気な姿が一番だなあと思う。



カルタを辞める



「おれ今日でカルタを辞める」
これは中学生太一の立ち別れの言葉だった。

中学生太一は勝ったら辞めると心に決めていた。
しかし高校生での太一は少し違う。
高校生では「負けたらカルタを辞める」であり、「勝つ」という言葉をなかなか口にすることが出来なかった。
この違いは一体何だったのだろうか。

中学生の太一は、カルタ以外にどうしてもするべきものがあり、そのためにも優勝して辞めるという確かな目標があった。
優勝したら一番にはなれるのだから、自分なりに納得することができる。
この行動の良し悪しは別にして、とりあえずこれが太一としては一番理想的な辞め方だったのだと思う。
しかし結局カルタに未練があり、完全に辞めることが出来なかったわけだが…

高校生の太一には、東日本予選で勝ちに行く理由を見つけられなかった。
「次は試合で」と約束した新が勝ちあがったからこそ、ようやく「新に会いに行く」=勝ちにいくという目標が生まれた。
しかし名人戦予選は勝ちあがることが最も難しい試合でもある。
他の試合を選んで、勝って辞めればよかったのではないだろうか。
なぜ太一はこの試合をわざわざ選んで戦いに来たのか、それはまだ明らかにされてはいない。

次回中学生太一と千早の立ち別れシーンは描かれるのかな?
千早の一人は嫌だという姿がよく分かるシーンだし、描かれるといいな~と思う。

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