ちはやふる中学生編4首感想---ライバルという鏡

BE・LOVE 2017年1号号掲載


ライバル平井くんへの苛立ちで日々もがき続ける太一。

平井くんのことをもっとよく知って それから自分のことも見つめなおすんだ 太一ならできるよ

人は人間関係においてどうしても気になって仕方ない、見ているとなぜかイライラしてくるような相手に出会う時がある。
感情が激しく揺さぶられる相手というのは、実は相手に映された自分の姿を見ているものである。
他人は自分を映す鏡と言われるけれども、太一は平井くんに一体どんな自分を見ていたのだろうか。


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相手は自分を映す鏡



素直に信頼すること



誰かに褒められたり助けられてそれを素直に喜べないときは、何かしらのコンプレックスを相手側に感じているときである。
太一が平井くんに感じた苛立ちは、学力云々以上に「人を素直に信頼すること」にあるのではないかという気がする。

自己肯定感が低く自分を認めることが出来ない太一は、同じように他人も認めることが出来ず、無意識のうちに「素直に相手を信じる」という気持ちを抑圧してしまう。前回のサッカーの選抜テストでは、平井くんは司令塔として仲間を信頼しそれを活かすことが出来ていたが、太一は自分だけが目立ち命令ばかりする人間になってしまっていた。

---勉強やチームなどで上の立場になる人間なら、嫌味で命令するだけの人間でいい。
なぜなら自分も他人を信頼する気持ちを抑えているから、その方がかえって安心する---
太一の潜在意識に潜むこの思いは、平井くんの素直な気持ちを目の当たりにすることで刺激され、それを非難されているように感じてしまう。
彼への苛立ちは、彼を通して見ている自分自身への嫌悪感でもあったのである。


自分のための行動



また二人に共通していたのが「自分のため」に今何をするべきか分からないということ。
太一は彼の中に同じ自分を見つけ、それを助けたり救ってやることで、間接的に自分を助けることに繋げることができた。
平井くんが「自分のため」にゴールできたことは、太一のフォローがあったからこそ。
自分では直接できないことを相手を通して実行させてやることで、太一の心に確かな安心感が生まれ自己肯定を促し、自分が求めていた答えへと導くことが出来た。


経験で得たもの



…平井 ナイス

この言葉が自然に彼の口から出てきたのは、平井くんを知ることでありのままの自分を見つめ直し、抑えていた心を開放できたからであると思う。

素直になること。相手を信じること。相手を知ること、そして自分を知ること。


平井くんの褒め言葉ももう嫌味に聞こえない。仲間を信じて自分を知る。この経験と成長こそが、その後の高校生太一のリーダーとしての在り方だったのだろう。


本編とのシンクロについて



太一の成長



また今回の話は本編との連動が非常に秀逸な回だった。
それは初登場の父親の存在であったり(母親の言う通り飴ちゃんが出てきたのはウケたww)母親の「一位になる」信念であったりするけれども、最もシンクロしていたのは太一の成長であったと思う。

本編太一の「自分になること」そして「謙虚になること」

中学生太一の「自分を見つめなおすこと」そして「素直になること」


時を超えて彼の成長は等しく描かれ、それをより一層印象深いものにさせている。
中学生太一は、鏡を通して見た高校生太一の姿でもあったのだと思う。


謝罪シーン



そしてもう一つ印象深かったシーンが、太一の千早への謝罪。
これもまた、平井くんのお陰で素直に自分の心を表現できるようになった太一の成長の証。
しかし実はこのシーン、小説版にはどこにも描かれていない。
こんな大事なシーンなのにどこにもない。何度か読み直したけれどやっぱり見当たらなかった。(もし見逃していたらすみません。)
今回の話は末次先生と遠田先生との相当入念な打ち合わせがあったとは思うのだけれども、敢えてこのシーンを入れたのには何か理由があるのだろうか。

本編の太一は千早への罪悪感をずっと感じている。
34巻で何気に千早に近づいたのは、「次の試合でカルタを辞めること」と「千早への謝罪」を口にしようとしたのではないか…と思っている。
しかしこの時はいきなりのカラオケ招集と唐突に始まった千早の人生相談のせいで、太一はそのタイミングをすっかり逃してしまった。

太一が191首で「謙虚さ」を心に芽生えさせたのであれば、今回の中学生太一のように素直な気持ちを千早に伝えることが出来るのではないかと思っているのだが、果たしてどうなるだろうか…
このシーンも本編にシンクロさせるのか、全く関係ないのか、非常に気になっているところである。

とにかく今回の中坊太一は、チビでがむしゃらで一生懸命で本当に可愛かった。
チームちはやふるといい、30巻で一目惚れした松林兄弟といい、わたしはやんちゃで元気なキャラ(特に男の子)にすこぶる弱いのだ…すっかり中坊太一のファンになってしまったよ…
頭わしゃわしゃしたいな~父ーちゃんずるいぞ、そこ代われ(笑)