ちはやふると和歌三神

192首の感想で述べた「鶴」についてもう少し掘り下げてみようと思う。


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和歌三神



山部赤人と衣通姫



若の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る

万葉集巻第六に収録されているこの歌は、神亀元年(724年)10月、聖武天皇の和歌の浦(若の浦)への行幸に随行した山部赤人が詠んだ歌と言われている。
和歌の浦には玉津島神社が鎮座し、風光明媚な神のおわすところとして崇められてきた。神社には和歌三神(わかさんじん)の一柱である衣通姫尊(そとおりひめのみこと・衣通姫)が祀られている。

和歌三神

和歌の守護神と仰がれる三柱の神。柿本人麻呂・山部赤人・衣通姫(そとおりひめ)をいうが、玉津島明神・住吉明神・柿本人麻呂または住吉明神・玉津島明神・天満天神とするなど、諸説がある。


玉津島明神である衣通姫は第19代允恭(いんぎょう)天皇の后で和歌の名手。さらに絶世の美女であり、その麗しさは、その名のとおり「衣を通して光り輝いた」ほどであった。
衣通姫の詠んだものとして次のような歌がある。

我が夫子(せこ)が 来(く)べき夕(よひ)なり ささがねの 蜘蛛の行ひ 是夕(こよひ)著(しる)しも

これは密かに藤原宮の衣通姫の元に訪ねる允恭天皇へ、衣通姫が恋い慕って詠んだ歌。
十分すぎるほど天皇の寵愛を受けていた衣通姫であったが、皇后のそねみに耐えられずいつしか河内へ隠居してしまった。
しかし天皇への思いはいつまでも消えることなく、会えないながらも逆らえない愛を生きた運命の人として後世まで語り継がれ、それは七夕伝説の織姫に通じるとも言われている。

「若の浦」の歌は和歌の守護神である山部赤人と衣通姫の二人が深く関わり、また衣通姫からは織姫の七夕伝説が浮かび上がってくる。
192首にこの歌を連想させる「鶴」が描かれたのは、非常に興味深いところといえよう。
(以前「千早に宿る姫君たち」にて千早には三人の姫がいると考察したけれども、もう一人この「衣通姫」も関係あるかもしれない。)


柿本人麻呂



また和歌三神の一人でありながらここには登場しない柿本人麻呂であるが、彼の歌に関しても漫画の中で印象深いシーンがある。
20巻105首千早・太一戦のラストで千早が取った札は人麻呂の歌「あしひきの」であった。

あしひきの 山鳥の尾の垂り尾の 長々し夜を ひとりかも寝む


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ここには札とともに夏の大三角形が描かれている。


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夏の大三角形は、36巻までの千早・新・太一の関係図であり、ベガに重なるこの札は千早が取ったことを意味している。
(三人と星の関係性については、「太一星」「太一と千早---導の宿命」を参照のこと)

ちなみにこの絵では真ん中に白い線が引かれている。これは流れ星?彗星?山鳥の尾?この線はアルタイルとベガ・デネブの間を隔てている境界線のようにも見え、何らかの暗示のようでもある。


夏の大三角形と言えば織姫と彦星。
織姫と彦星の七夕にまつわる星の伝説は万葉集に多く詠まれ、特に万葉集巻第十には98首もの七夕の和歌が並んでいる。
そのうち柿本人麻呂歌集に載るものとして38首の歌がある。人麻呂と七夕とは実は非常に縁が深い。
この場面で敢えて彼の歌を選んだのは、夏の大三角形が描かれていることを考えると、七夕伝説と全くの無関係とは言えないだろう。

一年に 七日の夜のみ 逢ふ人の 恋も過ぎねば 夜は更けゆくも

「一年で7月7日の一夜だけ逢うことが許されている彦星と織姫だが、その一夜も別れなければならない夜が更けてきて名残惜しくてたまらない」
万葉集巻10‐2032、柿本人麻呂歌集に詠まれた上記の歌は織姫と彦星の逢瀬の短さを儚むもの。

短いからこそ、出会えたこの一瞬を大切にしたい。

吉野大会からのじりじりと膨れ上がる新の思い、東西戦での突然の告白は、この歌を踏まえて考えてみるとより深く感じとることが出来るのではないだろうか。

柿本人麻呂、七夕、夏の大三角形、和歌三神、鶴、衣通姫と織姫。


それらはすべて繋がり三人の運命の「結び」となって紡がれてゆく。
特に20巻からはその印象がより色濃くなっている。
少しスピリチュアルな話にはなってしまうが、カルタの勝敗だけではなく、そのような視点でちはやふるを理解すればまた別の意味で面白いのではないかと思う。
ちはやふるは和歌、神話、星の運命が複雑に絡みゆく物語である。
作者は漫画を通し、そのメッセージを読者にずっと送り続けているのである。


おまけ:名人クイーン戦ミニ観覧記



さて6日、名人クイーン戦の2回戦から3回戦の途中まで解説室にて初観覧しました。
選手たちの巧みな取りと戦術、それらを周りの人と一緒に驚き感動し拍手して、本当に心地いい時間を過ごすことが出来ました。
時間に追われ慌ただしい観戦だったけど、それでも現地に行ってよかった…
選手の皆さま素晴らしい試合を本当にありがとうございました。

ところで家に帰ってヤレヤレとお茶を一服、PCを開けてブクマしている末次先生のツイッターを確認したら、なんと2回戦では目と鼻の先にいらっしゃったようで思わずお茶をこぼしそうになった。


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恐らくわたしの三つ前、最前列辺りにいらっしゃのかと…?


これ気が付いていたら、もしかして会場でお会いできていたりしたかも?
「スマホに変えんからアカンのやろ~ww」とさんざん家族にバカにされ、もう返す言葉がない…ううー泣けてくる。
はあーーーお会いしたかったなーーーでもお顔知らないし無理だったかな…でも会いたかったです…
posted by とかさま at 00:00考察