ちはやふる193首感想---名人への決意

BE・LOVE 2018年3号掲載


新の大学推薦入試。自分が世の中で何をするべきか…そう考えたときに出た答えは、名人になるという新の確固たる決意であった。


「名人になります」



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祖父の御前の前での礼は、6巻35首南雲会でカルタを再開したときに、カルタと祖父の写真の前でしていた一礼と重ねている。


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思えばこの一礼が、新のカルタの再出発の始まりであった。

この時抱いていた思いは「名人戦予選西日本代表を目指すこと」。
目の前の目標は名人ではなく予選を勝ち抜くことであった。
その後も高校選手権で優勝する、チームを作って更に強くなる、ライバルに勝つなど何度か目標は変わっていく。
しかし実は、「必ず名人になる」と他人に宣言したことは一度もない。
「名人になるのがおれの夢」というようにあくまでも名人は夢のままであり、それは漠然としたものでしかなかった。
20巻の西日本予選の時でさえ名人は「関係ない」、あくまでも目の前の敵に勝つことだけを目標としている。

夢と目標はよく似ているが全く性質の違うものである。
夢は将来実現させたいと心の中に思い描いている願い。手に届かないかもしれない、それに近づきたいと考えるぼんやりとした風景。
対して目標とはそこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。
何に取り組むかだけでなく、期末までにどれだけやる、どんな状態にする、というところまでを明確にすることで、達成度評価を可能なものとする。

何かを実現するためには、夢を持つと共に明確な目標が必要。
そうすることで目指すべき場所に到達する可能性はより高まってくる。

二年の時の東西戦の新は、なぜ原田先生に勝てなかったのか。
それは相手に勝ちたいと思うだけで、名人になることが彼のはっきりとした目標になってなかったからだ。
「名人になる」という腹の底から湧き上がる情熱と狂おしいまでの執念さ、強欲さが、原田先生に比べて新にはまだ足りなかった。

はい なります 名人になります

今回新ははっきりとそれを口に出すことで、生まれて初めて「名人」を夢ではなく目標に設定した。
名人への道が、目に見える形となって明確に示されてきた。新のカルタが再び始まる瞬間である。
それは今まで以上に苦しく厳しい縛りではあるが、同時に自分を限界まで追い込む闘志ともなる。
もう後戻りはできない。この決意は彼をより強くすることだろう。


真っ赤なスーパーカー



そして千早の対戦相手は結川さんだったことが判明。
今までほんわかした可愛らしい雰囲気だと思っていた彼女だが、もれなく彼女も作者の洗礼を受けて予想外のキャラ立ちをされてしまった。全く作者も容赦ねえ(笑)
結川さんにとって詩暢ちゃんも東の対戦相手も、所詮はただの「世間知らずの高校生(ガキ)」。
若さゆえの未熟さという嫌な部分をチクチクと攻撃されそうで、さて千早はそれにどう対処するのか。

猪熊さんの話の様子から見るに、千早の最大の武器は「最速で走る真っ赤なスーパーカー」。
もみじの舞い落ちる真っ赤なこの武器は、千早が千早になる彼女にとって一番大切なもの。
…しかし千早はそれが何なのか分からない。思い出せない。彼女にはまだそれが戻っていない。
それは翻弄され行き場を失い、未だに運命という海の中で静かに漂っている。
それをあるべき場所に流れを戻すのは一体誰の役目になるのか、気になるところである。

そして太一だって負けてはいられない。
小学生時代を彷彿とさせる彼の髪形(!)は何かしらを吹っ切った決意の表れのようにも感じる。
彼にとってこの試合は、卑怯な手を使ってしまった小学生校内大会の自分へのリベンジ戦。
千早云々はもう関係ない、この試合は男同士の意地と意地のぶつかり合いだ。
彼は正々堂々と最大の力をもって新に挑んでくるだろう。

新は名人の道を進むことができるのか、千早の真っ赤な武器は戻ってくるのか、太一は自分自身に打ち勝つことが出来るのか。
東西挑戦者決定戦、とうとうここに開幕する…!

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