ちはやふる中学生編5首感想---霧の向こうに

BE・LOVE 2018年3号掲載


自分というものを知り前に進み始めた太一。心の中の霧が晴れたとき、そこに現れたのはカルタで繋がる大切な仲間たちの姿だった。


平井くん



他人じゃなくて 自分のために 頑張れよ

第4首で言われた太一の言葉に背中を押され、自分を見つめ直しはじめた平井くん。
出来もしないカルタに率先して手を挙げたのは、「自分」がやりたいと思ったからこそであった。


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太一は平井くんに自分の姿を映していたように、平井くんもまた太一に自分にはないものを感じていた。
いくら避けられようとウザがられようと太一に近づいていたのは、「一生懸命に何かを成し遂げる」という自分に足りないものを彼の中に求めていたからである。
誰よりも鋭く、早く、決して手を抜くことなくカルタを取る太一の姿は、あまりにも楽しそうで光り輝いていた。
しかし自分にはそれがない。自分にとって一番必要なものは、彼の中にある。
そう気付いたからこそ、負けて悔しい、太一ともう一度カルタをして彼に勝ちたいと思ったのだろう。自分の悔しさへの挑戦である。

平井くんもまた太一に自分という姿を重ねて成長した。
そして二人を繋げてくれたものは、紛れもなく「カルタ」であった。

実は平井くんの設定は、小説版とは少し違っている。
小説版ではどんなことにでも興味を持ち、努力を努力と思わない楽し気な平井くんの姿に太一が魅かれていく、というものであった。
のらりくらりと捉えどころのない平井くんのキャラだったけれども、漫画版では「自分がない」という欠点を持たせて等身大の姿に設定変更している。
周りと同じように悩む姿を見て彼に共感を持てたのは非常によかったなあと思う。ぽやぽやお花畑もとっても可愛かったです(笑)



千早



カルタを続けたい、仲間と会いたいと願う太一の前に霧の中から現れたのは、踏切の向こうの千早の姿。
この場所は本編26巻で太一と千早が分かれた時と同じ踏切。
千早の元から去っていった太一は、時を超え、ループし、再びカルタと千早の元に戻ってきたのである。


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太一が、ようやくカルタの世界に戻ってきた。
この話が本当の意味での「終わりの始まり」だと思う。

朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに あらわれわたる 瀬々の網代木

今回は霧の中から抜け出した太一であるけれども、霧はこれだけではない。この先彼の周りにはいくらでもそれは現れる。高校でも、その先でも。
人生なんて霧そのもの。人はその晴れ間を求めてただ歩き続けるだけだ。

真っ直ぐ歩けないことだってある。
どうしてもカルタが出来ないときだって、いつかはあるだろう。
それでも前を向いて、とにかく歩き続ければいい。
たとえカルタが出来なくても、大切な仲間たちと一緒に心の中でカルタを取り続けていれば、それでいい。

千早、新、平井くん、藤原先生、原田先生、瑞沢メンバー、カルタで繋がった仲間たちの思い出の積み重ねは、霧の晴れ間へと彼を導く道標となる。
いつかきっと出口はある。視界が開ければ、彼が今までに見たこともないような美しい光景が目の前に広がっているはず。
その思いを決して忘れないでいてほしい。
彼にはこれから先もずっと、自分を信じ、自分の道を歩いて行ってほしいと思っている。

そして次回からはお待ちかねの「新」編!

須藤さんを始めお馴染みキャラもたくさん出る第2巻。

この巻では、福井の田舎のノスタルジックな風景と祖父の病気という孤独感が全体に漂う中、カルタの躍動シーンと死の予感という二つの相対するものがラストに向かって急加速していく。最後の場面はもう涙…
漫画ではどう描かれるのか、遠田先生の美しい絵に超・超期待しています!!

前回書くのを忘れていましたが、ビラブ3号では末次先生の原画展の日程が発表されています。実はあわらのイベントの日、運悪く子供の大事な用事が入ってしまい行けないかも…恐らくトッポで運を使い果たした…なので、せめて原画展だけは行きたい!東京・名古屋・大阪で開催されます。気になる方はビラブ3号を是非是非チェックです!