ちはやふる194首感想---湧き出る邪念

BE・LOVE 2018年4号掲載


東西挑戦者決定戦開幕。名人や千早との距離の近さをあからさまに見せつけ挑発を続ける太一。
太一の奇策に惑わされ新の心に湧き上がる黒い感情は、「自分の邪念」とそれに対する嫌悪感であった。


新の邪念



自尊心



ここで簡単に新の内面を少し掘り下げてみようと思う。
幼いころから祖父の好意的評価を受け、実力に見合うだけの成績を残し、自分の価値観を全面的に受け入れてきた新は「自尊心」というもので満たされている。
自己評価が低く否定的な評価を受け続けてきた太一とは全く真逆の環境であり、この自尊心が新を形成している大きなものといえよう。

自尊心とは、一般的には、他人から干渉されず他者から受け入れられ、自分を高く評価しようとする感情ないし態度のことをいう。
自信に由来し、自分の存在そのものを尊いと感じ、欠点も含めて自分を受け入れられる感情である。
自己信頼のもとに自分の人格を大切にする肯定的な感覚ともいえよう。


新は鍛えられた持ち前のポジティブシンキングにより、この自尊心を普段から安定した状態に保っている。
「新兄ちゃん」と年下から慕われたり、他者からの悪意を跳ね返したりすることができるのも、この嫌味のない一本筋の通った自尊心による。
しかし何らかの原因で心が激しく揺さぶられると、これが高まりすぎたり心から溢れたりして自尊心を上手くコントロールできなくなってしまう。
その原因というものが、「他者の優位性」。

「他者の優位性」は自分の「自尊心」を激しく脅かす存在である。
それを感じることにより、自分より優位に立つ他人に対して自分に自信がないことを隠そうとしてしまう。また相手に対して必要以上に自分を大きく見せ、自分の存在を維持しようとする自己防衛も働く。
それが普段現れるはずのない負の感情、つまり「驕り」であったり「自惚れ」であったりする。
「見下していた」とか「通過点」とかは、太一は自分より下であるべきだろうというその表れである。
そして自尊心のブレにより生じた今回の「自分の邪念」は、紛れもなく太一への「嫉妬」という感情であった。


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太一のもつ「優位性」とは名人や千早との距離の近さ。それは彼らとのコミュニケーションや信頼関係の深さでもある。
新の周りには名人もいなければ好きな子も近くにいない。コミュニケーションも決して上手いとは言いがたい。
彼らとの距離の近さは、今の時点での新にとっては欲しくても手に入れようがないものである。
名人との親し気な会話や千早を彷彿とさせる太一の行動は、新が普段気にしないようにしつつ心の奥にしまっていたものを逆撫でし、自尊心を刺激させるのに十分すぎるものであった。
しかも追い打ちをかけるように、千早のとった札「おおえやま」は新を負かした時の最後の札である。気安く太一に襷を渡す彼女の無邪気な行動も気に障っているはずだ。
新は持ち前の自尊心を激しく揺さぶられ、侮辱され軽蔑されたような屈辱的な感情におちいり、嫉妬とそう感じる自分への嫌悪感が再び心に湧き上がってしまった。

…しかし新は本当に千早が絡むとめっぽう弱くなる。恋愛に奥手な新だが、自分の恋への自信のなさも少なからず影響しているのか?手放す勇気はどこへ行った。勝負に恋愛感情は不要だが、耐性がなさすぎるのもよくないのかもしれない。



今後の展開予想



他者への嫉妬をなくし自尊心を上手くコントロールするためにはどうすればよいか。
二年の西日本予選では、村尾さんに指摘され、また試合中にトイレに行くという恥を晒すことで、運よくそれをかなぐり捨てることができた。
自尊心がなければ驕りの感情も湧かないし嫉妬を感じることもない。
「自分はたいした人間じゃない」、そう思うことでその時は自らの内にある黒い感情をなんとか抑えることができた。

しかし今回はそうもいかない。
対策として一番効果的なのが太一を太一と思わないこと。千早戦ではこれができずに負けてしまった。イメージを上手に使い、心にシャッターを下ろし、彼との心の距離をある程度とれば、嫉妬しない安定した環境に再び自分を置くことが出来る。
また相手に対する羨む感情を自分の「悔しい」と思う力に変えれば、それはモチベーションとなり強い武器となる。自分に集中し、自分の力を信じて太一にちは札を送る度胸が出れば、良い方向へ流れも変わるだろう。
新にとっての一番の武器は、やはり自分の力を信じることにあると思う。普段通りにさえすれば、彼は十分強いのだから。

逆に太一が勝つにはどうすればよいか。
新との戦いで「4枚差」というのは、少ないようでなかなか埋めるのが難しい数字だと思う。
新の対戦記録を見渡しても、この作品内において2枚差までなら五分五分、4枚差だと三回戦って一回勝てる程度。
この奇策も長くは続かないだろうし、翻弄するカルタを使うタイミングを読み間違わないことがやはり重要かと。
とにかく新の普段通りの力を封じ込めること。攪乱に次ぐ攪乱で先手を打ってゆけば、新相手でもかなりいいところまで行けるのではないと思う。
またいずれは送られてくるであろう勝負札のちは札も、守りカルタが得意な太一なら送り返さずに守り通すほうがいい。

どちらにせよ、曲がったカルタは新が決して許さないだろうから、何回戦かは分からないが最終的には実力勝負になると思う。

勝敗がどう転ぶのかは分からないが、場にある札が「これもしかして最終戦?」と思わせるような、あまりにも意味ありげなものばかり。
そしてまさかの一回戦でのちは札登場。二回戦くらいには出ると思っていたけど…。「ちは」「わた・や」「たち」「たれ」の現在の場所と今後の配置の変化にも要チェック。
勝利の女神ちは札は、今後この戦いにどうかかわってくるのだろうか。
次回は千早・結川戦メインかな。太一の行動が予想以上に吹っ切ってまして、内心もうドッキドキです(;^_^A

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