ちはやふる中学生編6首感想---決意と邪念

BE・LOVE 2018年3号掲載


今回から「新」編がスタート。6首では中一の冬、1月から3月までの話となる。


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この時期の祖父の容態は、カルタの本を読んだり新の練習にも付き合うことが出来ていて、脳溢血の後遺症で右半身は不自由なものの比較的元気である。
しばらくの間大好きな祖父と離れていた新にとっては、介護で中学の部活には入れないものの祖父とカルタが出来る喜びの方が大きく、幸せな日々を送っていた。
ただし介護のためカルタの大会に自由に参加することが出来ず、これが実力のある彼がB級のまま留まっていた理由でもある。

幼馴染の由宇は介護の手伝いには来てくれるが、新との関係は微妙にズレが生じてきていた。
思春期に入り少しずつ異性を感じ始めた由宇と、まだ恋の「こ」の字も分かっていないお子様な新との感覚の違いが初々しい。

そしてそんな新の元に舞い込んだのは、静岡県富士市に住む新の祖父の親友、佐藤先生からの大会のお誘いだった。


佐藤先生



佐藤先生と新の祖父とは、「同い年で高校時代からの強力なライバル」関係にある。
昭和50年代から60年代までの間、二人はカルタ界で二強と呼ばれ名人位を奪い合い、しのぎを削りあっていた。
年を取り遠く離れた地にいても、今でも二人はお互いを意識しあう大切なカルタ仲間となっている。

新にとっての祖父は師であり、名人を目指さすための夢と究極の理想像として存在している。
佐藤先生と一緒に眺める富士の山は、偉大な祖父の凛々しい立ち姿のように気高く美しいものであった。
新と語り合う中で、佐藤先生はその頂へたどり着くまでの方法、つまり「目標」の大切さを新に伝授してくれた。


目標の確立



じいちゃんが喜ぶことで 一番早くできそうなことは何だい?

同年代のライバルが存在しない新にとって、「誰かにカルタを追い抜かれる」ということは実感としてあまり湧かないものであった。
それまで目標がはっきりしなかったのはそれが原因でもある。
しかしいくら自分が強かろうとも、特別な才能がある人物が現れればすぐに追いつき追い越されてしまう。
その時のためにもなんらかの目標をもって自分の力を確かにしておく、つまり「目標の階段」をつくる必要がある、そう佐藤先生は新に諭した。
193首感想にて新の目標がどんどん変わっていくと述べたが、どうやらそれは佐藤先生の教えだったらしい。)

名人になるために、じいちゃんが一番喜びそうなことで自分ができそうなことは何か。

大会で優勝して…おれは A級になる

この決意こそが、中学生編の新の大きなテーマとなる。
新にとってA級になるという目標は、じいちゃんを喜ばせることとイコールであった。

しかし、もしこの目標が、A級にこだわらずどこかの大会で優勝するという程度で留めておけば…
祖父のために抱いた決意が皮肉にも彼を残酷な運命へ向かわせてしまうことは、本編をお読みの方ならよくお分かりいただけることだろう。


チビ須藤



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富士市のB級大会の準決勝で当たったのは、新の二つ年上、中学三年生のチビスドー。
この時期はドSのSではなく、攻めまくりのS。確かに中学生でドSはマズい(笑)
減らず口は今と同じくらいムカつくのに、チビのせいでくっそ可愛く見えてしまうのはどうしたらいいものか…
二人の試合は絶対に漫画で読みたかったのでものすごく嬉しい。今回須藤戦を3分の1割いて描いてくれた遠田先生はきっと天才だと思う(笑)

この時の新は本編と違い、まだポジティブシンキングを会得していない。
日々の訓練によりポジティブシンキングで自己暗示をかけられるようになるのは約一年後、中二の冬辺りになる。
自尊心だけ立派でもそれを支える支柱がなければ、それはただの見栄っ張りだ。他者の邪念があるとそれを素直に受け取ってしまい、途端に心がぐらぐらしてしまう。
今ではめったにお目にかかれない、蛇に睨まれたカエル同然の新である。


邪念の違い



もし今の新が須藤さんと戦ったらどうなるだろうか。
本編でも邪念に振り回されている新であるが、原因となる太一の作戦と須藤さんの悪態は両者で全く性質が異なる。

太一の行動は隠された新の欠点をえぐり出し、自分の内から邪念を生みだすものである。
須藤さんの言葉は「むかつく」とか「おれが取る」とか「雑なカルタ」とか、ただ感想を述べているに過ぎず、他者からの邪念となる。


高校の新は他者の邪念にはさほど動じないし、動じたところですぐに復活してしまうので、須藤さんの憎まれ口は効果が薄いと思う。
逆に相手の思い通りにはさせない新の強気なカルタに、須藤さんの方が苛つくかもしれない。
新のカルタへの苛つきは今回の中学生編でも描かれているし、30巻の新・ヒョロ戦の観覧の際でも「取れるわけねーヤダヤダ」と言及している。

しかしなんだかんだ言っても、強いもの同士の戦いってやはり楽しいだろう。
新と須藤、自分のことだけに集中した強いカルタを見られるのではないかと思うと、大人になった時のこの二人の対戦って考えるだけでちょっとワクワクする。


お馴染みキャラ



さて中学生「新」編では他にもお馴染みキャラがたくさん出てきて、これが物語の醍醐味でもある。今回出てきたキャラは次の通り。

  • 名人・クイーン戦で戦う周防さんと猪熊さん
  • 富士崎高校カルタ部
  • 北央高校の持田先生と甘糟くん、北央の伝統の横断幕も登場

これからどれだけのキャラが現れるかな?馴染みのキャラが出てくるとやっぱり嬉しい。
ちらりと描かれた若かりし頃のじいちゃんも素敵で、とっても眼福でございました(〃▽〃)
このじいちゃん一コマだけで、外の雪かき一時間は頑張れそうです。頑張ります。