ちはやふる195首感想---二人の弱点

BE・LOVE 2018年5号掲載


東西挑戦者決定戦序幕。神懸るほどの速さで札を取る千早に押され気味の結川は負けじと反撃を開始する。名人予選では、翻弄を続ける太一に苛立つ新が「怒り」を噴き出す。


千早・結川戦



信じられぬほどのスピードを見せる千早の「感じ」の能力は、周防さんの関心も引き付けるほど。
周防さんでさえも一字では取れない「おく」の札、これは14巻78首にて千早の脳裏に鹿(奥山さん?)のイメージが浮かび上がっているが、果たしてこれも記憶に関係しているのだろうか。
「おく」を一字で取れるということは「おぐ」との違いも聞き分けられるわけで、周防さんより実質2枚も一字決まりが多くなるということになる。
まあこれは二人の一字決まりルールの違いもあるかもしれないので、「なんとなくだが訓練で周防さんくらい感じがよくなった」程度に考えておけばいいのかもしれない。

結川さんの方は千早のスピードに圧倒されて手も足も出ない様子。
詩暢ちゃんとの戦いをしっかりと見据え左利き選手に十分な備えをしてきた千早を前に、これはただものではないと結川さんの目つきも変わってきた。
千早に対し結川さんの立てた対策は次の通り。

  • 左陣に札を固めて自分が得意とする配置に戻し、相手の記憶を混乱させること
  • 攻めがるた対策として右下段の札を極力減らすこと
  • 相手の得意札を見極めてすべて送り返すこと
  • 相手を雑魚と軽く扱わないこと


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結川さんの仕掛けてくる戦略と駆け引きが実に面白い。図らずも暗記は千早の最大の弱点でもあり、それの得意な結川さんには有利な運びとなる。
これはもしかするとかなりの接戦になるかもしれない。


新・太一戦



自尊心の揺らぎにより感情のコントロールが効かなくなった新に対し、太一はあからさまなちは札への誘導で更なる挑発を続けている。

邪魔や 太一

新の黒い感情は「嫉妬」から「怒り」へと変化する。

前回の感想にて「新は千早が絡むと弱くなる」と予想したけれども、これはあながち間違いではないらしい。
東日本予選にてちは札への思いをある程度整理し、周防さんのカルタの指導のお陰で自分を客観的に見ることが出来るようになった太一は、新の感情の動きが手に取るように分かる。

そうずっと その顔が見たかった

新はちは札が弱点であり、太一はそれを知っている。なぜなら自分もそうだったから。
その感情を上手く利用し、新をまんまと策略に嵌めてしまった訳である。

23巻にて新にないものは「愛情・愛情・愛情」と愛情を重ねて三つ述べていた。
この「ない」ものとは

ちは札を手放す「度胸」がない
告白の返事を聞く「勇気」がない
そして恋に勝つ「自信」がない



の三つではないだろうか。そして恐らくこれが新の弱点の本質である。

勝負に愛情は関係ないけれども、それが不安定な状態では勝負のメンタルに少なからず影響する。
それは古今東西誰でもそうだし仕方のないことで、一概に新を責めることはできない。
恋においても千早との関係の近さにおいても、自分より優位に立っている(と思ってしまっている)太一に対し怒りを覚えるのは、自分の不安の裏返しでもある。
「本当は自分はちは札=千早を手に入れられないんじゃないか」という漠然とした不安である。
そしてその不安を解消するため、自尊心を傷つけられないように精神的な防衛反応として「怒り」を覚え、相手を否定しようとするのである。


アンガーマネジメント



「邪魔や太一」という怒りで闘志を燃やすことはエネルギーにはなるが、頭に血が上るとまわりが見えなくなり必ず戦術を落としてしまう。
対策の一つとして精神コントロール法のアンガーマネジメントというものがある。アンガーマネジメントとは「怒らないこと」ではなく「怒りと上手に付き合うこと」。
もし試合中に怒りを覚えてしまったらそれを無理に抑えるのではなく、とにかく感情をコントロールすよう努めること。
大きく深呼吸をし、自分の感情を理解し何に怒っているのかを客観的に把握すれば、冷静さを取り戻すきっかけとなる。
自分の怒りに上手に向き合い、闘志を燃やしながらも冷静にいられれば、戦いのモチベーションを維持することが出来る。

ここで大切なのは怒りの矛先を絶対に相手に向けないこと。
「太一がこうするから腹が立つ」という原因ばかり求めていても、相手は変わりようがないからそれは全く解決にならない。
相手がどうするべきかではなく、「自分」が今何をするべきかを冷静に判断しなければいけない。あくまでも怒りの原因は自分の内にあると思う必要がある。


メンタルコントロールは本当に大事。これがマスター出来なければ、たとえこの戦いを乗り切れても名人戦ではとても勝つことはできない。
なぜなら対周防戦では、この何倍もの悪意が新に向けられるはずだからだ。

新はこの黒々とした雪の壁を無事乗り越えられるのか、これらの戦いの行く末はどうなるのか…乞う次号。