映画「ちはやふる-結び-」感想

映画ちはやふる「結び」観に行きました。面白かったです!
若干ネタバレ含みますのでご注意ください。


太一



今回も元気いっぱいの千早が最高によかったけれども、結びのMVPは紛れもなく太一でしょう。

原作の太一が「現実」であり「本当の自分」ならば、映画の太一は「夢と理想」であり、太一がなりたい、なりたいとずっと願っていた姿だったといえます。
仲間のピンチを助け、自分の罪を素直に謝罪し、対戦相手に礼儀をもって応える。本当は原作の太一だってこうなりたかったはずです。
ああやっと太一は解放してもらえたんだなと、激戦が終わった後の彼のやり切った表情を見て涙が溢れて止まりませんでした。

わたしはちはやふるの作品において、詩暢と新は「夢と理想」を具現化したものであり、千早と太一は「現実」で生きる姿という風にとらえています。
彼らが経験する失恋や挫折。思いっきりやりたいことがあっても「受験」という現実からは決して逃れられない。そうなりたいと一生懸命に願って努力しても叶わないことだってたくさんある。
千早と太一に対する作者の試練は容赦ありません。

映画では「夢」担当である詩暢と新の存在を極力抑え、その役割を太一に与えました。
観客は苦悩し努力しながら前へ進んでいく太一という男の子に自分を重ね、勝利を掴み夢を叶えにいく彼の姿にカルタシスを覚えます。
太一を主役にすることによって清々しく後味の良いドラマに仕上がったのではないかと思います。


周防



また周防さんのキャラにも若干の改変がありました。

原作では「がらんどう」で情熱を持たない虚無の存在として描かれていますが、映画での彼の心は少し違います。
自分の強さを誰かに伝えたいという情熱は、暗闇に光るかすかな灯として彼の心の奥底にも眠っていました。それがあったからこそ、太一に隠された情熱に気が付き、ドアの前で立ち止まる彼の背中を後押しすることができたのです。

周防さんは他を凌駕するほどの圧倒的な強さを持つにもかかわらず、視覚障害という現実に押しつぶされ、力と技を周りに伝える術を知りませんでした。
太一との練習において「感じ」とはなにか、「強さ」とはなにかを会話していますが、それは自分自身に向けた言葉でもあります。
「太一」という暗闇にうずくまる自分を目の前にして、自分とは一体何か、残された光のある時間をどうするべきかをずっと問いただしていたのです。ある意味それは禅問答のようでもあります。

しかし同じ人間同士では答えを見つけることはできません。自分の言葉だけではどうしても太一に一線を越えさせることは出来ませんでした。
彼を変えさせるものはなにか、団体戦当日にようやく周防さんは気が付くわけです。

花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせし間に

それは千年前から続く情熱の言葉でした。
この一言により太一はチャンスを掴むことができ、周防さんもまた「師」という最後の仕事を果たせることができました。
一線を越えるため、太一も周防さんもカルタと百人一首に助けられたわけです。

映画の周防さんは原作よりも視覚障害が遥かに進み、もうカルタを続けることはできないでしょう。
「周防さんは最強です」という太一の言葉は、周防さんのカルタ人生へのせめてもの花道であり、弟子から師への最後の贈り物だったのだと思います。


伊織



さてストーリー上の都合により「強さ」という羽をもぎ取られてしまった「新」というキャラですが、マッケンの演技は素晴らしかったものの残念ながら彼の魅力を感じることはできませんでした。「強さ」という彼にとって一番大事な部分をなくされたのは正直痛かったです。
下手すると存在感のなくなってしまいそうな彼でしたが、それを引き立ててくれたのは新キャラの伊織ちゃんでした。そして彼女が予想以上に良かった!

負けず嫌いで15歳の準クイーンという生意気さもある。何度でも振られようとめげずくじけず新に突き進む強気な性格でしたが、不思議とその姿には全く嫌味がなくて、ものすごくキュートな女の子でした。
実年齢に近いのもよかったのかな?新の妹分という雰囲気がでていて本当に可愛らしかったです。

実はセリフはあまりないんですね。「ほほう、秒殺か」「お兄、わたしと付き合ってや」「負けられんのお」「しのを取るんはわたしや!」の4つくらいです。
それでも強烈なインパクトが残ったのは、伊織ちゃんを演じる清原果耶さんのもつ眼力とオーラ故でしょうか。広瀬すずさんにも全く負けていませんでした。今後が楽しみな女優さんだと思います。

映画は小学生の息子と一緒に観に行ったのですが、太一ファンの息子は彼の活躍にすこぶる喜んでおりまして、映画の結果に大満足のようでした。地元の藤岡東や新の応援はどうでもいいんだと。っておいww
少女漫画原作というだけで敬遠していた主人も金ロー放送の上の句・下の句でいたく感動したようで、ようやくちはやふるの良さを分かってもらえてホッとしました。
母子だけで結びを観てしまったことに大人げなくふてくされているので、仕方なくもう一度家族で結びを観に行こうと思っています。メンドクサイ奴やのww


ちはやふる「結び」、本当にいい映画でした。
実写映画はわたしとちはやふるを結び付けてくれた存在でもあります。
「実写映画化」という単行本の帯がなければ、ちはやふるを読むことはなかったかもしれません。この「結び」の縁に感謝です。