「ハルコイ」感想

閑話休題。以前読んだ末次由紀作品・漫画「ハルコイ」がとってもよかったので、今日はその感想を。


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ハルコイは「指輪の片想い」「美彩食堂」「ななつの約束」そして表題と同じ「ハルコイ」の4つの短編からなる。
それは恋愛だったり、男女親子のすれ違いだったり、小さな女の子の冒険だったり、どれもが素敵な物語ではあるけれども、ここではわたしが特に好きな「ハルコイ」の話を紹介したいと思う。


「ハルコイ」



この話では二人の女性が登場する。一人は50歳の綾子さん、そしてもう一人は23歳ののんちゃん。着付け教室のちょっとした手違いで出会ったこの二人は、年の差27ありながらも不思議とウマの合う友人同士であった。

綾子には娘が家にいない。娘の美里はかけおち同然で国際結婚をし、結婚式も挙げずにイギリスへと渡ってしまった。あれやこれやのんちゃんに構ってしまうのは、会いたくても会えない娘の姿を彼女に重ねていたからに他ならない。
のんちゃんはグイグイくる綾子にすっかり押されてしまってはいるが、元来ののんびりした性格から彼女の行動力を頼りにしている部分もあったりして、それはそれでお互いに良い関係を築けている。

ちょっと不思議なのは、この綾子がのんちゃんの一番の相談相手となっていること。本人にとって最も大切であろう恋の相談を、仕事の同僚でもなく、母親でもなく、たった一年付き合ってきただけの綾子にしているのである。

で、この話を読むにあたって、わたしは頭の中で勝手に一つ設定を増やしている。それは「のんちゃんには実は母親がいない」(のんちゃんゴメン)。

綾子はのんちゃんに、会えない娘の姿を。
のんちゃんは綾子に、母親の面影を。

こう思うと、ストーリーにより深みが出るなあと(のんちゃんホントごめん)。

自分に足りない魂の欠片を相手に求め、互いに頼り支えあう。それは程よい関係であれば幸せで満ち足りたものだけれども、度を過ぎると取り返しのつかないものになる。綾子は「娘の恋愛関係」への過干渉という、おせっかいの母親がつい陥りがちな行動に出てしまった。

それは行き場のない娘への愛情が彼女を思わずそうさせてしまったのだろう。しかしそんなのは血の繋がらない見せかけの家族像であることには変わりはない。なぜ必要以上に口を出されなければいけないのか、のんちゃんには理解できなかった。彼女は思わず激高してしまう。

「娘でもなんでもないんだから干渉しないでよ!」

所詮二人は赤の他人。この言葉は二人に現実を突きつける。言った者、言われた者、どちらも傷つけてしまう心の楔となってしまうのである。


白いドレス



さて二人の間にはある重要なアイテムが存在する。ショーウインドウに飾られた白いドレスは、最初はのんちゃんを着飾るだけのただの布切れでしかない。しかし話の最後でそれはあるものへと姿を変える。白いドレスに魔法を掛けたのは、綾子がどうしても一番会いたかった人。二人を再び結びつけたのは「綾子の娘の愛」だった。

それはまだ桜の涙を纏っただけの仮の姿。しかしそれがいずれ本物へと姿を変えたとき、二人は本当の家族になれるのかもしれない。

ハルコイ、春恋、春よ来い。桜よもっと舞い上がれ。二人よこれからも幸せに。そう願わずにはいられない、じんわりとした温かみが心に広がる素敵な作品だと思う。

愛、幸せ、そして大切な人との絆と感謝の心。それらがすべてこの一冊の本に込められている。そしてそれらはこの後に描かれる「ちはやふる」という作品へと受け継がれていくのである。

書店やネットで見かけたら、是非一度目を通してみてください。手に取って読んでみてください。「ちはやふる」が好きな方なら、きっと末次先生が漫画で何を描いていきたいのか、その思いを感じ取れます。共感できます。
みんなの心に幸せが届きますように。「ちはやふる」の原点が、ここにはあります。


先週ですが、何通か出したファンレターの返事が末次先生から送られてきてビックリしました。直筆のサインとメッセージが原画展のポストカードに書かれていたのですけれども、美しい字面から先生のお心遣いがすっごい伝わってきました。ファン活動なんて永遠に実らない一方通行の片想いのようなもので、見返りを期待してはいけない無償の愛だとは分かってはいますが、こうやって形になると今までの応援が報われるような、めっちゃ幸せな気持ちに浸れます。お忙しい中恐縮でたまらないのですが本当にうれしかったです。ありがとうございました(*´∀`*)…ちなみにパソコンは未だに直っていません(笑)