ちはやふる200首感想---咲き誇る花

BE・LOVE 2018年13号掲載


東西挑戦者決定戦二回戦中盤。「S音まで取られるな」そう千早に叱咤する太一。それは千早がずっと待ち望んでいた、情熱ある彼の姿だった。


彼岸花と情熱と



千早は得意札である「しの」「す」といったS音でさえ結川に守られてしまう。手も足も出ない千早の瞳に、新から自力でもぎ取った札「す」を手にする太一の姿が映りこむ。

住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ


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太一の周りに描かれるのは咲き乱れる彼岸花。これは、かつては「悲しい思い出」を象徴するものとして描かれていた花であった。
しかしこの花には全く別の意味の花言葉が存在する。

それは「情熱」そして「再会」

目の覚めるくらい色鮮やかな赤色は、彼岸花を燃えるような色に染め上げる。それは苦しみを覚悟した情熱の炎。胸を射抜く鋭い眼光は千早が一番近くにいると感じた、吉野会で一緒に戦った時と同じものであった。

それは千早が夢にまで見ていた姿。千早が夢の中でもいいからひたすらもう一度逢いたい、逢いたいと願っていた太一の姿が、そこにはあった。何があっても自身の持つ最大の力で戦い抜こうと決意した彼が、千早の望んでいた姿としてやっと今目の前に立っていたのである。

そしてこの千早の表情から見るに、太一に対する特別な思いは彼女の中には確かにあったのではないかと思う。「あの時」、あの告白の時、やはり太一は気が付くべきだった。本当に千早の恋心が欲しかったのなら、彼はなんとしてでもカルタの情熱をもう一度手に入れておくべきであった。

この熱意があの時の太一にあれば…カルタへの熱い情熱を胸の内に秘めていれば…千早の返事は全く違うものになっていたかもしれない。ここまで二人が苦しむこともなかったのかもしれない。どちらにせよ、今となってはもう分からないことだけれども。

彼の情熱は千早へと逆流する。千早は落ち着きを取り戻すと同時にブーストを掛け始めた。

太一の情熱は千早を白富士へと一歩近づける。


新の進化



そして太一の心の炎は新の水の流れをも呼び覚ます。

新の渡り手に警戒した太一は、出札が分からなくてもいいから50パーセントの賭けに出て、とにかく片方だけは取ろうと画策する。それはかつて新が中学生時代に北央の選手にしてやられた渡り手対策ではあるが、もはや今の彼にその技は通用しない。

相手よりもっと手を低く。より速く。より正確に。

距離があり敵陣奥であるほど加速をしていた新の払い手は、自陣にさえその速さを見せつける。ありえないほどの超加速は太一を始め周囲を驚愕させた。予想以上の進化を見せてくる新の技に、太一は呆然と言葉を失う。

叩き潰してもまた 戦ってくれるんやろう?

勝ちにくる「ライバル」と認めた相手に、新はもう容赦はしない。ほの暗い底からゆらりと沸き上がる水のうねりは太一を飲み込み、彼を次第に溺れさせる…


母親の思い



試合会場の外では千早・太一・奏の母親三人が子どもたちの戦いを見守っていた。

口から吐き出す息は白く曇る。溶けた雪は着物へ染み込み空気の冷たさが肌へと刺してくる。指の先は赤くかじかみ、地面から伝わる足の冷えは余計に身体を凍えさせる。それでも母親たちは、寒さに震えながら子どもたちをじっと見守り続ける。たとえそれが、彼らに伝わらなくても。

あらざらん とどめおきて だれをあわれと思うらん 子はまさるらん 子はまさりけり

奏の母は千年前の歌を詠う。それは和泉式部が亡き娘のために詠んだ、子を思う親の愛の歌。親子の愛情は、今も昔も毛布にくるまるように切なく温かい。

子どもを見守ること。
子どもを信じること。
子どもを尊敬すること。
そして子どもを愛すること。


結局母親なんて子どもたちにできるのはこれくらい。そして「これくらいのこと」がどれだけ大事で、どれだけ難しいことか。

麗子さんは苦しんでいた。太一のこと、そして母親である自分のこと。でも認める、認められないなんてもう気にしないで。麗子さんの愛情と思いはきっと彼にも伝わっている。その眼にはきっと母親が映っている。だから何も出来てないなんて自分をもう責めないで。彼なら、きっとあなたと通じ合える。分かってくれる。だからどうか、自分を信じてあげてください。

試合は終盤へと移っていく。三人で始まったストーリーはもうすぐ「二人」と「一人」になる。みんな頑張れ。最後まで、無事に戦いきってくれますように…!

200首おめでとうございます!そして太一、総選挙一位おめでとう!わたしもハガキで一票入れました(^o^)千早と新にも一票ずつ。新のじーちゃんにも一票入れましたが、彼の選挙用ポスターは絶対若い頃の姿の方が良かったと思います。それから前回の記事ですが、編集の際に非公開ボタンをうっかり押したらしく、記事が消えていたので再掲載しました。普段自分のブログは(あまりにも恥ずかしくて)全く見ないので気が付きませんでした。大変失礼しましたm(_ _)m