「クーベルチュール」感想

今回は末次由紀作品、漫画「クーベルチュール」のご紹介。

イケメンなら、金髪茶髪で目が細めのタイプがいい、と、ずっと思っている。

小学生のころ、NHK「シャーロック・ホームズの冒険」のジェレミー・ブレッドに一目惚れをしたわたしは、「男はダンディズムに限る」というのを常に信条にしていた。友人から好みの男の子のタイプはと聞かれ、「ダンディーなおじさまがタイプ」と即答すると、なぜか口をぽかんと開けて絶句されてしまった。後でわかったのだが、どうやらわたしを好きな子がいたらしく、どんな人が好みなのかを聞いておいてほしいと頼まれたらしい。ちなみにその後一度もそれらしき人から告白されることはなかったのだが、それが原因だったのかどうかは定かではない。


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ジェレミー・ブレッド


しかし映画「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」を見て180度世界が変わる。スクリーンの中を縦横無尽に暴れまくる金髪の少年に目が釘付けになった。世の中にこんな美形の男の子がいるとは…!それは少年時代のリバー・フェニックス。神々しいほどの整った顔立ちと神秘的な瞳の色。わたしの心は一気に心が奪われる。ジェレミーごめん、イケメンなら断然金髪茶髪で目が細めがいい!


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リバー・フェニックス


以来彼がわたしのスタンダード。ちはやふるでいったら青年時代の綿谷始サン。先日の人気投票ではいまいちな結果で残念だったけど、イケメン総選挙だったらダントツ一位だなと(わたしの中では)確信している。


「クーベルチュール」の魅力



漫画「クーベルチュール」ではそんな細目茶髪イケメンが、ショコラティエとしてなんと二人も活躍している。なんですかこの本は天国ですか…?一郎さんと二郎さん、二人が働くのは洒落たチョコレート菓子でもてなす「クーベルチュール」という小さなお店。兄弟二人が作り出す勝率100パーセントのチョコを手に、四つの恋の小品が女の子の心を駆け巡っていく。読むと甘い甘い恋の味が口いっぱいにとろけ出す、そんな物語。


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注目すべきは一巻第三話「夏味」で登場する森田奈津美さん65歳。今は廃業した駄菓子屋店の経営経験者、中肉中背で黒眼鏡、主人には先立たれ娘は嫁にいき、一人暮らしで仏壇に花を添えることが毎日の日課という、実際に隣近所にも住んでいそうな普通のおばちゃん。そんな彼女がこの回での主役となる。もちろん一郎さん二郎さんとの恋バナではない。この本はただの恋愛物語ではないのだ。なんと三話目にして、おばちゃん人生リスタートストーリーと、二郎さん's ダブル鼻栓(笑)という二つの暴挙を、作者から叩きつけられるのである。さすが末次先生、やることがナナメ上すぎる。初読の際にはさすがに衝撃を覚え目がテンになってしまった(特に二郎さんの鼻栓に涙)。

彼女が「掃除・包装・調理助手」として採用されたのは、駄菓子屋の経験があったかららしい。しかしこんなイケメン二人の経営するお店、募集の際にはかなりのうら若き女性たちがこぞって応募しただろう。そんな激戦区の中で森田さんが目を付けられた理由は、果たしてお店の経営経験によるものだけだったのだろうか。


「おばあちゃん」としての魅力



ところで末次先生の描く年配の女性たちは、どれもこれも皆美しい。生徒たちを叱咤激励しながら、毅然とした態度で教師としての務めを果たす宮内先生。透き通るような声で読手をつつましくこなすキョコタンこと山城今日子さん。先日紹介した「ハルコイ」の登場人物・綾子さんもそう。「クーベルチュール」の二巻にも可愛らしいおばあちゃんが登場する。誰もがみな顔に残るほうれい線や年齢相応の脂肪と骨格をしながらも、年を重ねた分だけの深い魅力を周囲に放っている。

「年齢」に対する嫌悪感というものは女性の本能としてどうしても避けられないもので、多くの女性漫画家が魅力ある中年の女性を描けないひとつの原因ではないかと思っているのだけれど、末次先生は老いというものから決して目を逸らすことはなく、しわの一本一本までも丁寧に描いてゆく。「おばあちゃんになっても、こんな魅力的な女性でありたい」という具体的な女性像が頭の中で描けているからではないだろうか。女性の美しさとは決して容姿だけではなく、「どんな人生を送ってきたか」「どんな人生をこれから送るのか」という生き方にもあるのだろうと思う。ビラブで連載中の「傘寿まり子」に出てくるたくさんのおばあちゃんたちも、同じようにカッコいいですね。

生きがいを失い表情の乏しかった森田さんは、嫌がっていた接客を任されるようになってからは徐々にそれが柔らかくなる。駄菓子屋をしていたこともあり、森田さんは大の子ども好きだ。近所の子なら大概の子は名前を覚え、その子たちを見守る目は母親のように優しい。顔見知りの子たちに見せる、ふっと気がほどけた笑顔が本当に美しいのである。長年駄菓子屋で育まれてきたきた子どもたちへの愛情の木は、たとえ環境が変わっても失われることはなく、心の中でしっかりと根付いている。採用基準が本当にお店の経験だけだったのかは最後まで語られることはないけれども、きっとこの笑顔を兄弟二人は彼女に期待していたんじゃないかな、という気がする。

夏に売れないチョコはひんやりとしたアイスのチョコフォンデュとして。冷たく甘いチョコが、森田さんの溢れる笑顔とともに、とろりと心に溶けていく。それは冷たくて、とても温かい。イケメン二人と森田さん、アイス&チョコフォンデュのように普通とはちょっと変わった組み合わせだけれども、わたしは素敵な三人のいるクーベルチュールのお店が大好きだ。


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ちなみにわたしの主人はジェレミー似でもリバー・フェニックス似でもなく、「自称」イケメン…いや男の美しさだって容姿だけじゃない、めっちゃ明るくていい旦那さんやでと、優しくフォロー(笑)理想の男と甘いチョコ、夢のような恋物語の世界は「クーベルチュール」にて美味しく頂きましょう。

一巻の巻末には千早たちもオマケで登場。ちはやふるファンにも十分楽しめる内容になっていますよ(^o^)

ひがしさま:コメントいただきましてありがとうございました。いつも当ブログをご覧いただきましてありがとうございます。ちはやふる男性側の二回戦の結果はどうなるでしょうか、全く予測つきません。今週末のビラブが楽しみですね。