ちはやふる39巻感想---情熱

2018年8月9日発売


39巻の表紙は「青春すべてを掛けて」のシーンの新と太一。背景の花はカキツバタ。


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カキツバタの花言葉は「幸せはやってくる」「幸せはあなたのもの」「贈り物」。同時発売の姉妹本・中学生編2巻の表紙も同じくカキツバタで、二冊仲良くお揃いとなっている。


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またカキツバタを踏まえた歌として次のようなものがある。

唐衣きつつなれにし妻しあれば はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

「古今和歌集」と「伊勢物語」に登場するこの歌は、在原業平が東下りの折に「かきつばた」の5文字を句頭にいれて歌を詠んだとされる。これは折句(アクロスティック)と呼ばれるもので、ある一つの文章や詩の中に別の意味を持つ言葉を織り込む言葉遊びの一種である。

らころも
つつなれにし
ましあれば
るばるきぬる
びをしぞおもふ


在原業平といえば「ちはやふる」。カキツバタの絵にはちは札も暗示させていると思う。

39巻の表紙の中には、花言葉の意味、中学生編の存在、そして二人の男たちの間で繰り広げられた「ちは」札を巡る戦いと、まるで「唐衣~」の折句のように、いくつもの意味を仕組ませているのである。


情熱



さて39巻は太一の「情熱」が重要なキーワードとなっていた。また彼がなぜ26巻で千早に振られることになってしまったのか、その回答もあったように思う。ずばり単刀直入に言うと、

太一は新に負けたのではなく、情熱がなかった(つまり自分に負けた)から千早に振られた


ということが語られているのではないかと思う。なぜ太一に情熱が必要だったのか、それについては今まで延々と話してきたのでここでは述べないでおく。もう一度よく知りたいという方は36巻感想200首感想、及び202首感想をお読みいただけると大体のことがわかると思いますので、そちらをご覧ください。


太一と情熱



もし太一が告白の際に「全国優勝連覇を一緒に目指そう」とか「一緒に名人とクイーンになろう」とか、あるいは「千早のカルタをする姿が大好きだ」とか、とにかくなんでもいいからカルタに情熱を注ぐ発言をしていれさえすれば、千早は嬉しそうにコテンと倒れて固まるか、もしくは「今はまだ世界一を目指したい」というような前向きな返事をもらえた可能性はある。実際のことはわからないけれども、少なくとも即お断りはなかったと思う。

千早は真正のカルタばかだから、「この人についていけば一番楽しいカルタができる」というのは、野生の勘のごとき本能で察知している。千早は太一にもそのチャンスをずっと与えていた。太一杯なんてその最たるもの。にも関わらず、あの時の太一は悩むばかりでチャンスを掴もうとしなかった。

告白の際の言葉はよく練られていて、太一は自分のことや千早の容姿には述べるものの、彼女のカルタのことにだけは一切触れていない。カルタは千早にとって一番大事なことで、どうにかしてカルタに関することを何か言えばよかったのに、分かっていたとしても口にすることができなかった。なぜならカルタは新に繋がるから。新と戦うのが怖いから。普段は器用貧乏なくせに肝心なところで不器用な正直さが出てしまって、こういうところが実に不憫な子だなあと思う。

太一は自分が一番嫌いなカルタから逃げる代わりに、一番欲しかったものである千早の恋を手に入れることができなかった。自分で自分のチャンスを潰してしまったわけである。ある意味自業自得ともいえる。今までの非礼を詫びなくてもいいわけではないけれども、彼の犯した罪は十分に罰を受けているのではないかと思う。(ただし今から太一と千早が付き合いだすという流れになるのなら、また話は変わってくるけれども…)


契りきな



運命戦に残った札「ちぎりきな」は39巻の表紙折り返しにも書かれている。この札は「失恋」を意味する札となるが、この解釈が分かれてすっきりとしない。

新の陣に残ったと見るならば、千早と新のストーリーはここでジ・エンド。

すんでのところで太一に取らせたと見るならば、この先何らかの方法で新が千早に恋の紅葉を撒き散らすことがあるのかもしれない。今回ちは札は取れなかったけれども、今後どこかの試合でゆっくりと取り返せばそれでいい。




202首の太一の背中には星のようなものが描かれているが、これは37巻190首で描かれていた太一の北極星と同じものと思われる。(紙質が原因でビラブ掲載時には気が付きませんでした。)


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39巻202首より

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37巻190首より「新と千早のところに行きたい…」


203首で「新と千早のところに行きたい」発言が再び出てきたのも、この星繋がりではないだろうか。デネブとベガは将来北極星になる運命を持っているから、太一がちは札を取るシーンは「デネブ(もしくは北極星)がベガを引き寄せた」と見るとなかなかに面白い。

そして北極星があるということは、対になるアルタイル新はどうなるのか…


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ベガ=千早、アルタイル=新、デネブ=太一=北極星

思えばこのブログは「夏の大三角形」の三人の関係性を述べることから始まりました。考察もすべてこの関係性をもとに発言しています。これからこの関係性と異なる話に進むのであれば、今までの考察はすべて意味をなさないし、そのときはブログを手放す心づもりはしています。これはもう仕方のないことだと思っています。ブログを辞めるからといってちはやふるのファンを辞めるわけではないので、念のため。もしある日、当ブログがふつりと消えることがあっても、何も言わずにそれとなく事情を察していただけるとありがたいです。



特装版オマケ



39巻の特装版のオマケが非常にかわいいかったので、写真に収めておきました。


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表紙を開けると…

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キュートな付箋がぎっしり。隣にスマホ置いた方がよかったかな。めちゃくちゃ小さくてかわいいです。あまりにも勿体なくて使うことができないですね(;^_^A



去る8月13日、原田先生役の石塚運昇さんがお亡くなりになりました。アニメ三期を目前にして残念でたまりません…心よりご冥福をお祈り申し上げます。