ちはやふる207首感想---帆をかかげて

BE・LOVE 2018年21号掲載


瑞沢カルタ部日常回。千早と太一のための祝勝会&残念会を開こうとする部員たちに、奏が提案したものは。


オフトゥン狂騒曲



東西戦での千早と太一の活躍をねぎらいたい、と部員たちは騒ぐものの、受験が間近に迫っている三年生たちはそれどころではない。というわけで奏が提案したのが「布団で太一に心ゆくまで癒されてもらうこと。」祖母の古希祝いで購入した100万円の布団を、一晩だけ太一に体験してもらおうという、とんでもないサプライズ企画であった。って意味わからんww


chihaya207-2.jpg
オフトゥン


部員たちは布団一式を電車で運び、太一の家へ押しかけ、妹の承諾を得て彼の部屋へ忍び込み、シーツをせっせと付け替える。

まあお約束ということで、太一と母の麗子に当然見つかるわけだけれども、

男のベッドにうら若き乙女が三人も寝そべり、
なぜか妹は「パンツ」と叫び、
ベッドの下から男子の足が飛び出し、
横で肉まんがはみ出て縮こまるという、

なんともシュールで壮絶な光景が、そこには広がっているのであった…。これはさすがに、同じ子をもつ母親として麗子さんに同情します。ご苦労様でした(;^_^A


chihaya207-3.png
おパンツ


「強さ」というもの



なんやかんやで騒動は収まり、部員たちはほどなく帰宅。太一も予備校に行くため彼らに付き合う。

道すがら太一は奏に、東西戦での新の袴直しのことを改めて感謝した。

本当の自分は性格が悪くて、新の袴のことなど気にしたくなかったという気持ちがあったこと。
そして袴直しをお願いしたのは優しさなんかじゃなくて、自分の仲間を新に自慢したかっただけだということ。

思わぬところで太一の本音が飛び出したことに、奏は驚く。それは結果的に敵に塩を送ることになってしまった、奏の行為に対する気遣いでもあった。しかし奏は彼の言葉に別のものを感じ取る。

それは、自分の弱さに向き合う強さ。

以前の彼なら、「自分は性格が悪い」なんて決して言うことはなかった。「自慢したい」という欲をわざわざ他人に吐露することもなかった。プライドをかなぐり捨て本来の自分の姿をさらけ出す彼は、東西戦という一つの区切りを終えて、一回りも二回りも成長して見える。

また彼が口にする「ありがとう」という言葉には、控えめながらも彼なりの優しさが込められていた。自分で自覚しようとしない、他人だからこそ見えてくる彼の優しさ。奏にはそれが痛いほどよく分かる。どうしてこの人はいつも、他人のために自分を犠牲にしようとするのだろう?いろんな色の絵の具でごちゃまぜに塗られた空気が喉に詰まったようで、奏は涙をにじませた。


dhihaya207.jpg


そして千早も成長した。受験というハンデに臆することなくカルタに向き合い、太一の悔しさと無念を一手に引き受けて、一心不乱に戦い抜こうとする覚悟が彼女にはある。

奏は二人の強さに感化される。まるで地面から掘り出したばかりの、鈍く光る鉱石のような強さ。今の自分にはこの強さがあるだろうか?過ぎ去りゆく日々の中で、何かを変えていく力があるだろうか?


「今でも千早ちゃんを…」



ここまで強くなった二人に今なら聞けるかもしれないと、奏は以前から気になっていたことをつい口にしてしまう。「真島くんは、いまでも千早ちゃんを好きですか……?」

その質問に太一はもう本心を隠すことはなかった。思っていたことを、はっきりと声に出した。

……もうよくわからん…でもだんだん薄れていくんじゃないかって思うよ

この言葉には主語がない。文脈の流れでみれば、薄れていくのは「好きな気持ち」が自然なのだろうけど、わたしとしては「失恋の痛み」の方がいいなと思う。恋として好きな気持ちは薄れていくかもしれないけれど、大切な友達としての好きな気持ちは、決して失われることはないだろうと。それくらい、二人の絆は深いと思う。

太一の言葉は紅葉の調べとなって千早の耳に流れてゆく。それは迷子になった竜田姫が織りなした、本来の龍田川の紅葉とはほんの少しだけ違うものだったけれども、千早の心を美しく彩っている風景には変わりはない。千早は両手いっぱいに抱えた紅葉を舟に乗せ、大海原へと漕ぎ出していく。後ろを振り返ることなく、前へ、もっと前へ。風を受け、太陽の光を浴びて、帆を掲げる勇ましい雄姿は、高い志を胸に宿す。人を勝利へと導く、戦いの女神のように。


それぞれの役割



家に帰り、奏は一冊の本を手に取る。自分の興味を優先した文学部か、店の将来を思っての経済学部か、以前より奏は志望学部の選択に迷っていた。でももし、自分にも何か変われる強さというのがあるならば…自分の役割というものを考えるならば…選択するのはただ一つ。奏は「応桜義塾大学・経済学部」の赤本をゆっくりと開いた。


chihaya207-4.jpg
「ちがう、なんかちがう!」


そしてラストの太一の役割は、まさかのギャク担当。いつもとちがう布団の感触に、癒しというより違和感しかなく、なかなか眠りにつくことができない。諭吉100枚分相当の快眠を、果たして太一は無事に得ることができるのか。どうなる太一、次回へつづく!?ww



前回206首感想にて追記があります。短いですが太一について大切なことを述べていますので、もしよろしければそちらも合わせてご覧ください。