ちはやふる210・211首感想(2)---戦い

BE・LOVE 2019年号2掲載


周囲の批判や好奇の目に晒されながらも、一人戦い続ける詩暢。新、千早、そして詩暢母の彼女への思いとは。


新×詩暢



詩暢は新との練習試合を積み重ねるも、新に負けてしまう原因が皆目見当つかない。新には全然勝てないし、綿谷家での押しかけ連泊を親に叱られるし(これは当たり前ww)、学校からはSNSを辞めろと言われるしで、詩暢はとうとう凹んで意気消沈してしまった。カルタへの愛も、プロへの道も、マニアックすぎるカルタの知識も、すべては自分にとっては大切なもの。しかし他人にとっては迷惑なものでしかないのかと、詩暢は新に問いかける。

そんなことない そんなことないよ

カルタは新、新はカルタ。カルタの神様たちの思いは新の励ましとなって詩暢に伝えられる。大丈夫、君はそのままでいいんだよ、と。神様たちの愛情は見えない優しさの結晶となって、詩暢の背中をそっと前へ押しやった。

ところで詩暢から新への感情は愛かどうか、というのが気になるところではあります。33巻では、カルタと新を重ねて詩暢の「唯一の友達」と言っていたり、前回では詩暢の絵札を千早が「家」と表現していたところから見るに、男女間の恋愛というよりは友愛、または家族愛に近いように思います。お互い内気な一人っ子で気の合うこともあるでしょう。仲良い兄妹のようなライバル関係、といったところでしょうか。けれど所詮は血縁関係のない男女の話。いつまでもカルタが友達ではないという渡会さんの言葉は、いつまでも新が一緒にいるわけではないということも暗示しているのかもしれません。だからこそ詩暢には、気の置ける同世代の友人が他に必要なんですね。



母×詩暢



さらに詩暢はSNSの手痛い洗礼を受ける。アンチスレの攻撃は日を追うごとに過激さを増し、悪口だけでなく、祖母の職業、高校名、自宅の住所などもネット上に晒していた。自分の容姿にまで心無いコメントで中傷され、さすがの詩暢も深く傷つく。追い打ちをかけるように、「どうせ有名になりたいんでしょ」と理解のないクラスメイトたちに罵られてしまった。

うちは有名になりたいんやない 仕事を作りたいんや

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学校で詩暢のことを理解してくれる人は一人もいない。詩暢は一人で戦うしかない。詩暢は周囲と戦うために声を張り上げた。

しかし詩暢の心を満たす器はガラスでできている。それほど強くない。その器は「若く、美しく、世界一強い」という祖母の言葉が芯になっているけれども、その芯が折れてしまったら、きっとそのガラスは粉々に砕けてしまう。一人でも戦うことはできるが、一人で戦うには、そのガラスはあまりにも脆すぎる。芯が折れないようにするには、周囲、そして家族が支えてやるしかない。

詩暢の母詩穂は、今まで娘の価値を外見にしか見出していなかった。人からどのように見られているか、どれほど美しくいられるか、そしてどう振舞えば人に好かれることができるか。これらは詩暢という人物をひき立てる要素の一つではあるけれども、詩暢の内面の評価に関しては全くの無関心であり、その無関心さが詩暢の心を苦しめていたことは否めない。(その原因についての描写は曖昧である。詩穂が手のかかる娘の子育てに嫌気を差していた、もしくは世間知らずな自分への羞恥心から子供にも愛情を注げなかった、といったところかもしれない。)

しかし、詩穂がようやく一人の母親として娘の内面や能力を尊重し、娘と一緒になって戦おうとする姿勢が表れだしたのはよかったと思う。子供の支えになるのは周りの環境も大きく関与するが、未成年のうちはやはり親の力が一番頼りになるはずである。母の努力が、今後の詩暢の大きな助けになるよう願ってやまない。


千早×詩暢



そして遠くから千早も動き出す。「勝つのは私です」とテレビで豪語する千早は、一見すると高慢ちきなウザい姿に見えてしまうけれどもwwこれはきっと詩暢を守るための行為だと思っている。この番組は詩暢への誹謗中傷を見てからの撮影であること、また「詩暢ちゃんを一人にしない」という信念に基づくものであることなどから、世間の注目を自分に向けて詩暢への批判をかわす作戦である可能性が高い。(でも違ったらごめんなさい。)怒りに震えあがる詩暢の気持ちも分からないわけではないが、「詩暢を理解したい」という千早の気持ちは確かに本物であるし、詩暢にとっても千早はヒーローであるはずだと、わたしは信じている。

純粋な夢への戦いは周囲をも動かす。新、母親、結川、小石川、そして千早。様々な人が様々な形で詩暢の夢を作り上げる力となる。詩暢ちゃんはもう一人じゃない。夢に向かって、頑張れ詩暢!



先日5日、名人クイーン戦の2・3・4試合を公開解説席で観ました。(メールの読み間違いで、生の観覧席とすっかり勘違いしてましたww)ご招待くださいましたHさま、並びに4試合目の当確ハガキを快くお渡しくださいましたBさま、大変助かりました。ありがとうございました。(ちなみに2試合目は末次先生とニアミスだったらしい…後にツイッターで確認。お会いしたかった!)

4名の選手方それぞれ素晴らしい試合でしたが、いち福井県民として注目していたのは、やはり名人戦の行方でした。

粂原選手は昨年の敗戦に挫けることなく、負けた試合内容を徹底的に研究され、体重管理に筋力増加、卓越した心理作戦と対川崎名人の緻密な戦略を練り上げていました。まさに名人の器となるべき強さを兼ね備えていた方だと思います。特に敵陣右下段への切り込みは素晴らしいものがありました。これからの更なるご活躍に期待します。粂原選手、名人位獲得おめでとうございます!

そして川崎選手ですが、王座陥落という結果はやはり残念ではありました。しかし川崎選手のもつ力と気迫は、誰もが魅了されるような美しさがありました。本物の「美しい強さ」をもつ技と速さを、厳しい戦いの中で魅せてくれた選手でした。たとえ名人の座を失おうとも、わたしにとってのカルタの日本一、そしてカルタの世界一は川崎選手であり、福井渚会です。どうか今後も「福井の誇り」として居続けてくださいますように。これからも応援します!