ちはやふる3巻感想---机くんと太一

3巻の表紙は千早。背景は紅葉した枝ものと赤い実。


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この枝について色々調べたけれど、残念ながら植物名が特定できなかった。ナンテン、ニシキギ、ナナカマド、ハナミズキ…どれもが当てはまりそうで、どれも違う気がする。今回はさすがにお手上げ。誰か教えて…。折り返しの歌は「せをはやみ」、千早と新の関係を奏が和歌に例えたものとなる。

この感想は40巻までを読んでの感想となっております。4巻以降のネタバレを含んでいますので、くれぐれもご注意ください。



知識という力



人間の性格を9つに分けるという、とある性格診断が巷にはあり、わたしが感想ブログを書いたり個々の心情を読み解くときには、この性格診断にいつもお世話になっている。ちなみにわたしの性格を診断すると以下のようになった。

机くん4:詩暢3:太一3:千早2:新1:その他1

勝負事が苦手なので新テイストは少ないけれど、内気、照れ屋という共通事項でプラス1~2ポイントくらいあるかもしれない。とにかくわたしは詩暢と太一がブレンドされた机くんタイプらしい。この診断、腹が立つくらいによく当たってる。このブログが太一と詩暢の話に偏るのもそのためかと(;^_^A

机くんのタイプ「知識を得て観察する人」は自分の力で得た知識、そしてデータというものを何よりも重要視するものである。自分で情報を集め、分析したものが何よりも大切であり、それがこのタイプのもっとも信頼できる「力」となる。しかし何もかも自分でデータを解析しようとするため、他人から介入されることを拒むことが多い。そのために人と積極的に交わろうとせず、人間関係が希薄になる傾向がある。とまあ、なんとも胸に突き刺さる人物評…

3巻ではこんな机くんの話に照準を合わせている。知識の優劣で見下したり、他人の努力に嫉妬したり、仲間に相談もせずに試合のボイコット宣言をしてしまうという、欠点ばかりの机くん。なぜここで彼を取り上げるのか不思議な感じもするけれど、理由の一つとしては太一のとある行動を促すためではないかと思っている。


机くんと太一



社交性の高い太一と消極的な机くん。一見すると繋がりがないようにも思えるけれど、似通っている部分も実は多い。机くんの万年2位という成績は、中学生時代の太一と平井との関係を彷彿させる。太一は最後まで平井に成績で勝つことができなかった。周囲との疎外感はチームちはやふるにおける太一の感情そのものだし、自分には才能なんてないと端から決めつけて他人に嫉妬するのも太一の欠点と同じ。

これらはみな太一が普段絶対に誰にも見せようとはしない、醜い負の感情である。机くんは太一の「負」そのものであり、太一は机くんに自分自身の裏の姿を見ていた。(ちなみにこれは田丸さんと千早の関係にも同じことがいえる。初期のころの田丸さんは千早にとっての「負」の象徴だった)

太一は他人には絶対に欠点を見せようとはしない。彼の心の蓋は岩のように重い。その蓋をどけて太一の本心をさらけだすには、多少なりとも強引なやり方が必要となる。そこで登場させたのが机くんというキャラだった。太一は「机」という負の象徴を放り出すことで、心を固く閉ざしていた分厚い蓋をようやく破壊することができたのである。

かるたの才能なんかおれだって持ってねえ きつけどやってんだ 負けるけどやってんだ

カルタに本気になれるか自信がなかった太一は、この言葉により、ようやく自分のカルタ道の道しるべを見つけることができた。勝負しても勝てないかもしれない、でも勝てる喜びがいつかあることを信じて戦い続ける…これは彼のカルタのことではあるが、きっと彼の今後の人生においても主要な指針となるはずである。負けてもなお戦い続ける勇気こそが、太一にとって最も必要な「核」だからだ。

だからこそ40巻での新との友情の確認のときにこのセリフは思い起こされ、また映画「上の句」においても、試合の山場を盛り上げる印象深いシーンにこのセリフは使われた。これは太一が自己投影した机くん相手だからこそ生まれた言葉であり、机くんは太一を覚醒させるための重要な存在でもあったのである。

(ひとつだけチクリと言わせてください。「結び」でわたしが本当に観たかったのは、新に試合でボロクソ負けて落ち込んで、それでもなお挫折から這い上がろうとする太一の心意気だった。恋愛や受験ばかりだけなく、もう少し勝負への絶望感も欲しかった。その上であの結果だったら最高に面白かったのに…なんて言ったら、ほかのファンの方に怒られるかな…これは好みの問題かな)

そんな机くんも、3年間瑞沢チームの一員として戦い立派に成長した。彼の作ったデータは本物の「力」となって瑞沢を団体戦の優勝へと導き、仲間からの厚い信頼も得ることができた。自分のデータを信じて運命を引き寄せ、しかもその結果に驕ることのなかった明石女子戦のときの机くんはマジでカッコいい。「ただの時間だったものが、宝物になった」という34巻の彼の涙は、試合への怖さから決して逃げずに努力を怠らなかった自分自身へのご褒美だったのだと思う。

仲間にするなら畳の上で努力し続けられるやつがいい

この太一の言葉通り、机くんが瑞沢の仲間の輪に入れたのは彼の努力の賜物であった。一位になっても、なれなくても、チームのために努力を諦めないという信念さえあれば仲間はできる。これを机くんは身をもって証明してみせたのである。

そして何よりも喜ばしいのが奏との恋の成就。メインキャラだけではなくサブキャラにもちゃんと幸せの贈り物を授けるというのも、ちはやふるの素敵なところ。机くんを他人とは思えないわたしとしては、彼の成長に密かにほくそ笑んでいたりもする。わたしも机くんに自分の影を重ねているから。机くんのメガネの奥は未だに秘密のヴェールに包まれているけれど、その見えない瞳はきっと明るい未来を映している、(そしてメガネを外せばきっと壮絶イケメンに変身するww)そう思っている。